道はRoadでもWayでもいい

道を渡ってくる風はやわらかで、
かすかに甘い香りを運んでくる。
レザーのファスナーを上げる。
さあ、行こう。

道はRoadでもWayでもいい。走る道なのか、生きる道なのか。
ただの味気ないグレーのアスファルトの道も、
季節や天気や時間帯で光線が変わり、まるで違った景色を見せることがある。

 記憶に残るその道はとても美しく風は優しい。夜明け前。まだ地平線から昇っていない太陽が空の半分をオレンジ色に染める。もう半分は夜の名残の深い青の空。そしてその空を淡く反射した道。それらの神秘的な色は刻々と変化してキセキの一瞬が続く。
 雨上がり。正確にはまだ雨は止んでいなくて、雨雲が切れて陽射しが差し込んできた。雨はキラキラと銀色で、濡れた道も銀色だ。そして奇跡的に虹がかかることがある。本当に奇跡なのは虹が完全な半円で、大きくて、しかも中心が道の真ん中にあること。そして充分に大きいとき、まるで真上に見えるような気がする。ジャスト・アンダー・ザ・レインボーだ。
 海霧か雲海か。海岸線が崖になっていて、それを縫うように進むワインディングロード。途中に橋も。海面から霧が上がってきて、上がり過ぎると道が消えてしまう。山の雲海も分厚くなり過ぎて、道を飲み込んでしまうことがある。もっと高度を稼いでいけば、道が雲上になる。真っ白な雲か霧かわからない中から突き抜けて、眩い世界が一気に広がっていく。
 残念なのはこうした絶景を道からしか見られないことだ。ドローンを飛ばせば、ときどき海面を見せながら海霧の間を縫うように進む道や、雲海とともに高度を上げながらときには尾根を走る天空の道も、地上にいるのとは違ってダイナミックに広がる。別世界だ。
 いつもの街角が“いつもの……”じゃないことがある。夕暮れ時だったり、初夏のまばゆい陽光が降り注ぐデイタイムだったり。街路樹が季節の変化を教えてくれる。ハッとするほど別の場所に見えたり、ほんの少しいつもと違ったり……。
 どんな道を走るのか、どんな風に佇んでいるのか。そして、どんな景色を見ているのか。その人の人生を彩るのに、少しだけHYODが手助けできたらと思う。