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The Leather Maker
私たちがレザーを愛する理由。
私たちHYODの仕事は、1970年代からレーシングレザースーツ作りをすることから始まっている。そして1988年に創業し、2004年にHYODブランドを立ち上げたときもレーシングレザースーツでスタートしている。HYODが革を使用した製品にかけたものづくりの歴史はすでに50年以上にまで及ぶ。レーシングレザースーツは、HYODの中核を成すプロダクツであり、大袈裟ではなく、我々の精神的な支柱となるプロダクツでもある。だから、レザーというマテリアルは、HYODのルーツであって、すべてはここから始まっているといっていい。
何といっても我々はレザーを熟知している。もちろんレザーもどんどん進化しているし、これからも探求し続け、開発もしていくけれど、ベースとなる特性をどれだけ理解しているかということがとても重要だ。厚み、張り、伸び、強さなどを理解した上で、パターン(衣服の設計図にあたる型紙)を設計し、デザインし、裁断し、縫っていく。レザーは、はっきりいってとても扱いにくい。厚みはあるし、切りにくいし、同じものはないし、表面の傷も、伸び方向も質感も個体差があるからだ。パターンをデザインするにしても、裁断するにしても、縫うにしても、「個体差のある特別なマテリアルであること」、この特性を熟知していなければならない。パターンは、CADを駆使した独自の3次元(3D)立体パターンを使う。要は平面の素材から縫って立体を作るのだ。前傾姿勢でのライディングが多いロードレース用レーシングレザースーツなら、体の前側を背中側より狭く、腕の付け根のアームホールを前側に配置する。肘や膝も強く曲がることを前提としたパターンになる。最新レーシングレザースーツなら、激しく動く身体に追従する究極の3Dパターンを採用する。レザーや通気性を確保してメッシュレザー、ストレッチ性があるシャーリングやケブラーニット、硬質のカーボンプロテクターなどをそれぞれ専用のミシンを使い分けながら丁寧に縫い合わせていく。レザーは、レーシングレザースーツの場合、基本的に1.4mm厚を使い、4枚以上重ねて縫う個所では1枚0.8mm(これでも強度を確保する厚み)まで薄く削いで縫う。こうすることで縫い合わさる箇所がゴワつかず、動きも着心地も良いものになる。また、厚く“思うとおりにならない”レザーというマテリアルをうまく帳尻を合わせて縫っていくなど、縫う段階でも立体を作っていく繊細な技を駆使する。
こうして作られるレーシングレザースーツでの3D立体パターンと縫製手法をストリートウエアにも落とし込んでいくのだ。もちろんライディングフォームがよりアップライトになることや、パーツ点数が少なくレザー1枚が受け持つ面積が大きくなるなど違いはあるけれど、ライディングで必要な3Dパターンの基本概念は同じだ(ST-Xシリーズの中にはレーシングレザースーツとほぼ変わらないアイテムもある)。HYODのストリート向けレザーウエアは、最高峰ROMAN BLACK(ジャケット)、ST-Xシリーズ(ジャケット&パンツ)、SMARTレザーパンツなどがあるが、いずれも最新のレーシングレザースーツを製作していなければ出来ない3D立体パターンと縫製手法で製作されているということだ。
D3O®プロテクターの配置はレーシングレザースーツの場合は機能・運動性重視だけれど、ストリート向けの場合は、それが目立たず、身体の動きにも追従して、着心地も快適なようにデザインされている(実はこれがかなり難しい)。 肝心のレザーは、0.9mm厚、1.2mm厚、1.4mm厚、1.6mm厚が、強度としなやかさのバランスを見ながら決められる。ROMAN BLACKのレザーは、バロンレザーとイフリートレザーの2種類を使っている。2つのレザーには異なる特徴があって、どうしても2つ作りたかったから2つのレザーを開発し、採用したのだ。どちらも牛革だ。
まず、バロンレザーは、伝統的な張りのあるハードなジャケットを表現したくて選んだレザーだ。でも驚くほど軽く作りたかった。種類はステアレザー(生後3~6ヵ月で食用のため去勢された雄牛で、2歳以上の成牛皮を加工)で、去勢されていない雄牛よりもしなやかで、同時に丈夫なのが特徴だ。クロム鞣しで加工され、革厚は1.4mm厚でレーシングレザースーツと同じ。仕上がりは、美しいツヤにこだわった。しなやかさも兼ね備えるので、見た目に反して軽く、動きやすい。ROMAN BLACK専用に開発した3D立体パターンを採用してあるだけに、着心地や運動性は想像以上に素晴らしく仕上がっている。一般のレザーウエアでは考えられないくらいライディングがスムーズにできるし、降りた後のシルエットもきれいに見える。
一方イフリートレザーは、ホルスタインレザー(乳用牛)で、クロム鞣し。革厚は1.2mm厚とバロンレザーよりも少し薄目。仕上げの顔料の吹き付けは極薄く、光沢はバロンレザーが100%だとしたら50%くらいの半艶仕上げだ。ただし顔料が薄いので、しなやかでもっちりとした独特の感触を持つ。もともとのレザーの表面がそのまま表れてしまうから、傷などを隠しにくいのがネック。ただ、このレザーは圧倒的なしなやかさを生み、着心地がとても軽いのが大きな特徴だ。着心地は優しく上品で、「レザージャケットは硬く、重い」という概念は、これにはまったく当てはまらない。そしてバロンレザーもイフリートレザーもウォータープルーフ処理を施してある(鞣し途中でフッ素加工する)。もちろんレインウエアいらずではないが、撥水性が高く、濡れた後で乾いたときに変質しにくい特性を持っているからお手入れも簡単で済む。また、SMARTレザーパンツは、“革は水に弱く洗えない”という定説を覆したウォッシャブルレザーだ。本当に自宅で洗えるのだ。そして乾いた後でも縮んだり硬くなったりしない。さらに撥水性と低吸水性を長期間持続する。この秘密は、表面加工ではなく、フッ素化合物を皮革のコラーゲン繊維に浸透させ撥水性・低吸水性を発揮させていることだ。これは洗濯しても衰えないから本当に強力だ。
天然素材である革を使用したレザーウエアは大量生産には向いていない。だから原則として「ハンドメイド」で作られる(それだけ扱いにくいマテリアルだ)。その中核を成すのが浜松本社のHYOD FLAG-SHIP STORE HAMAMATSUの1Fショールーム裏手にあるHYOD ORIGIN WORKSだ。ここではレーシングレザースーツやROMAN BLACKなどのレザーウエアを製造している。CADを駆使してデザインし、熟練のクラフトマンたちがレザーを裁断し、ミシンをかける。広々としたハンドメイドのファクトリーには、レザー特有のいい匂いがいつも漂っている。
HYODが、なぜレザーウエアに力を入れているか。極論HYODは、常にスピードと風に襲われる究極のアウトドアスポーツに適した最良のマテリアルは、この天から授かった革=レザーしかないと信じているから。そしてなにより、HYODは革というマテリアルを今も昔も変わらずにこよなく愛し、リスペクトしているからだ。だから我々はレーシングレザースーツもストリートレザージャケット&パンツも、それぞれレザーで表現し続けることにこだわり、それをポリシーとしている。
レザーも、レザーウエアもまだまだ進化し続ける。
これからもHYODは、天から授かったこの奇跡のマテリアルを生かしながら創造し、楽しみながら、多くのライダーに喜んでもらえる最良のプロダクツを産み出していきたいと思う。
